地域に根ざし、長年にわたり社会に貢献し続けてきた滋賀銀行。同行が現在、注力している領域の一つが「人的資本経営」です。新たな中期経営計画のもと、「ヒューマンファースト」を基本戦略の一つに掲げ、組織全体の企業文化変革に乗り出しています。その一環として実施された「支店長研究会」では、Uniposがパートナーとして参画。今回は、人事部の皆様と支店長を交え、その背景から実践、そして未来への展望まで、多角的な視点からお話を伺いました。 背景——滋賀銀行が「企業文化」を支店長研究会のテーマに据えた理由滋賀銀行様は、年に一回「支店長研究会」という研修を実施されています。1962年から始まり、2024年度で63回目を迎えたこの会は、全ての役員・支店長・本部の部課長たちが一堂に会し、人材育成をテーマに議論する場です。毎年組織の状況に合わせてテーマを選定していますが、今回は初めて「企業文化」を掲げられました。今回「企業文化」をテーマに据えられた背景には、2024年4月に始まった第8次中期経営計画があると言います。現在、人口減少や脱炭素社会への移行、ライフスタイルの変化、生成AIの革新的な進歩などにより社会構造が変化し、滋賀銀行様をとりまく環境は大きな転換期を迎えています。地域経済の縮小、事業所数や労働人口の減少、産業構造や金利環境の変化、企業の後継者不足といった課題に対応し、2033年の創立100周年と、その先の未来に向けて滋賀銀行グループの役職員が心を一つに歩み続けるために、「『三方よし』で地域を幸せにする」というパーパス(存在意義)を新たに制定。このパーパスの実現に向けて、第8次中期経営計画では「人」こそが価値創造のドライバーであると位置づけ、3つの基本戦略の一つに「ヒューマンファースト」を掲げ、「人的資本経営」を推進されています。植田様:これまでは、施策や制度といった「ハード面」の整備を進めてきましたが、それだけでは不十分だと感じていました。なぜなら、箱だけ作っても活用するのは人ですから、やはり「ソフト面」である企業文化も充実させなければ、真の意味での人的資本の最大化はできないからです。その中で、目玉施策のひとつとして大きく変革したのが、行員表彰制度である「しがぎんヒューマンアワード」です。これまでどうしても業績や成果ばかりに焦点があたりがちであったのに対し、新設したヒューマンアワードでは「行員の役割や行動」に光を当て、行員一人ひとりからの投票で選出する形に変更しました。これが非常に大きな反響を呼んだため、この勢いを一過性のイベントに終わらせず、組織に深く浸透・定着させるために、支店長研究会のテーマを「企業文化」に据えることになったのです。※出典:株式会社滋賀銀行 第8次中期経営計画(計画期間:2024年4月~2029年3月)企画——Uniposが滋賀銀行と歩んだ信頼構築と共創のプロセスこの支店長研究会を実施するにあたり、Uniposは研修の企画から当日の運営、そして振り返りまでサポートさせていただきました。この重要な企業文化変革のパートナーとしてUniposを選んでいただけた理由について伺いました。辰野様: Unipos社とのご縁は、約2年前に田中会長のウェビナーを拝聴したことがきっかけでした。当時、「カルチャー」について、理解を深めたいと考えていたなかで、Unipos社独自の視点と言葉に強く惹かれました。ウェビナーへの参加をきっかけにやりとりを続けていき、支店長研究会で企業文化を打ち出すことが決まりました。このタイミングでぜひ田中会長にカルチャーについて語っていただきたいと考え、依頼することを決めたのです。1年半ほどかけて当行の考えや悩みを共有する中でUnipos社が私たちの課題をとても丁寧に、かつ的確に汲み取ってくれることが分かり、それも依頼する上での後押しになりました。アウトプットされるものが常に「あ、そうそう、そういうことです!」と、まるで私たちの思考をそのまま形にしてくれるような感覚で、本当に心地のよいコミュニケーションができましたね。植田様: Unipos社とのやり取りの中で、特に印象的だったのは、担当の仲里さんが「私どもの使命と思って頑張ります」とおっしゃってくださったことです。Unipos社が掲げる「最高の集団を自らつくる、時代をつくる」というパーパスや、行動指針の「相手の視点を想像し、共創する」というバリューが、社員一人ひとりに深く浸透していることを強く感じました。これこそが企業文化だと痛感し、まさにパートナーとして、この支店長研究会を「共創」してくださっていると感じました。こだわり——企業文化の本質的理解と行動変容を促す仕掛け半年間もの期間をかけて入念に企画された今回の支店長研究会。その企画段階で特に大切にされた点やこだわりについて伺いました。植田様: 企業文化という「目に見えないもの」をテーマにする以上、まず参加者一人ひとりに「人的資本経営において、企業文化がなぜ大事なのか」を正しく理解してもらうことがスタートだと考えました。Unipos社にも協力いただき、前段で企業文化の重要性や、それが組織のパフォーマンス向上につながることについて時間をかけてお話いただきました。辰野様:「突然『カルチャー』という言葉が飛び出してきた」という受け止め方にならないよう、単発の講演で終わらせず、「流れ」を大切にしたいと考えました。そのために、先に「ヒューマンアワード」を2024年秋に実施し、企業文化醸成の取り組みを全社的に行ってから、2025年3月に支店長研究会で「カルチャーとは何か」を取り上げることで、自分事として考えてもらう流れを作ったのです。具体的な体験の後に抽象的な概念を考えてもらう流れをつくることで、抽象的な話で終わらせず、「明日からのマネジメントにどうつなげるか」、「日常の見え方や気づき方に変化を与えられるか」にこだわりました。植田様:今回の支店長研究会では、もう一つ大きな挑戦がありました。それは、「役員向けワークショップ」を初めて同時開催したことです。「自らも学び続けなければいけない」という経営陣の意向を受け、組織全体の企業文化をより良くするための課題について議論してもらう場を新たに設けました。「挑戦と称賛の企業文化をつくる」という方針のもと、役員自らが新しいことにチャレンジし、学ぶ姿勢を見せることで、組織全体へのトップからのメッセージという意味でも組織にとって大きな影響のある挑戦でした。Unipos社には、この二本立ての企画において、テーマ設定から進め方まで多大なアドバイスをいただきました。変化①——支店長研究会を契機とした企業文化変革の手応えと変化の兆し様々な試行錯誤を経て迎えられた研修当日。参加者の皆様はどのように感じられたのでしょうか。植田様:参加者の方々から多く聞かれたのは、「この学びを部下にもやってほしい、広げたい」という声でした。その声から、支店長自身が、日頃から良い職場環境づくりやパフォーマンス向上について悩んでいることが伺え、今回の研修を「自分事」として捉えてもらえたと感じました。辰野様:正直、営業店の支店長からは、カルチャーのような抽象的な話は「本部が考えること」と冷めた反応もあるのではないかと不安な気持ちもありました。しかし、実際には「こういう機会がなければカルチャーについて自分の中で整理できなかった」「カルチャーとは何か分かりました」といった肯定的な反応が多く、想像以上に企業文化というものが、各職場でも重視すべきものと理解されていると感じています。「部下の行動のいいところをもっと見つけられるようにしたい」など次のアクションにつながるような感想もあり、参加者の皆さんに気付きを持ち帰ってもらえる場になったのではないかと思います。当日の運営に携わった水口様も、参加者の活発な様子を感じたと言います。水口様: 私自身も初めての支店長研究会でしたが、グループワークでは皆さんが活発に意見を交わしていて、その熱量に驚きました。ワークシートで「良い行動を増やすためのアクションプラン」を検討する際には、朝礼や終礼での共有、サンクスカードの発信、さらには「支店版ヒューマンアワード」をつくるといった具体的なアイデアまで出てきて、皆さんが本当に自分事として考えていらっしゃることが実感できました。初の試みであった、役員ワークショップも同様に盛り上がりを見せたそうです。植田様:役員向けワークショップの実施に当たっては、Unipos社には事前のインプット会の実施とワークショップの参考データの取得という2つの事前準備をしていただきました。当日までは「期待半分、緊張半分」だったのですが、Unipos社のサーベイ(組織インサイトサーベイ)を通じて表出された課題や問題点を含む、行員からの「生の意見」に役員が全員で目を通し、それらを受け止めた上で活発に議論を行われていた姿が印象的でした。ワークショップの場を通じて、経営陣の間で何がいま取り組むべき組織課題なのか、共通言語をつくる有意義な場になりました。※Unipos社の独自設問設計と生成AI技術で真の組織課題を見つけるサービス。詳細はこちら からご覧いただけます。▲研修当日の様子今回の研修は、これから数十年かけて挑んでいく企業文化変革の一歩目の取り組み。短期的に劇的な変化を目指すものではありませんが、すでに変化の兆しも見えていると言います。植田様:研修を終えてわずか3ヶ月ほどですが、エリア単位で独自の表彰制度を設けようとする問い合わせがあったり、直近2025年5月に実施したエンゲージメントサーベイのスコアで「称賛」や「組織風土」の項目が少し上昇したりと、既に“変化の兆し”が見えてきたと感じています。辰野様:「文化」や「カルチャー」「称賛」といった言葉が、社内で公式化してきている感覚があります。また、「課題は伸びしろ」という田中会長の言葉は、専務自らがメッセージとして発信し、課題をポジティブに捉える意識変革につながっています。これまでは課題を指摘するとネガティブに受け取られがちでしたが、今では経営陣自らが「課題をどんどん言ってこい、伸びしろだから」と促しており、心理的安全性も高まり、組織として同じ方向へ進みやすくなっていることを感じています。変化②——職場での取り組み事例と研修後の変化実際に、各職場ではどのような取り組みがされているのか、支店長研究会にご参加いただいた、瀬田駅前支店長兼瀬田支店長(※取材当時 現石山支店長) 小嶋嘉行様にもお話をお伺いしました。瀬田駅前支店・瀬田支店は約50人の職員が勤務する大規模店舗です。パートタイマーや時短勤務者など多様な働き方の職員がいることや、物理的な壁や離れた拠点があることにより、コミュニケーション課題に直面していました。そこで、小嶋様は、リアルな対話の促進と情報格差の解消を重視し、以下の取り組みを推進しています 。小嶋様はご自身の取り組みについて「大したことはしていない」 と謙遜されますが、植田様、辰野様は「これらの施策が、両支店の活気ある職場文化と高いエンゲージメントにつながっている」 と語ります。植田様: 瀬田駅前支店・瀬田支店は毎年多くの新入行員が配属されますが、若手のエンゲージメントスコアが非常に高いです。特に「やりがい」や「成長実感」の数値は常に上位です。小嶋支店長の取り組みが、若手の成長を大きく後押ししていると感じています。辰野様:小嶋支店長のお話を伺って、カルチャー変革の難しさを改めて感じました。カルチャー変革には「この施策をやれば正解」というものはないですし、施策の内容そのものだけでなく、なぜこの取り組みが必要なのか、どんな価値があるのか、といった施策の前段でとるコミュニケーションの「文脈」が重要です。このことは、瀬田駅前支店・瀬田支店で取り組まれている「ボーナス運動」にも通じると考えています。この施策は数年前までは全店で取り組んでいましたが、どうしても成果や業績といった側面が強く連想されてしまうことから、現在では組織全体としては実施していません。そのような中、小嶋支店長は、あえてこの運動を支店独自の取り組みとして「復活」させています。それでも行員の皆さんのエンゲージメントが非常に高く保たれているという状況は、「ボーナス運動」の施策そのものに「問題」があるわけではなく、その施策が「どのような文脈で」「どんなカルチャーの中で」行われているかが鍵であることを物語っています。まさに、小嶋支店長が常に「人の心がこもったコミュニケーション」を意識し、施策の意図を分かりやすく伝え、部下と信頼関係を築いているからこそ、両支店のカルチャーが成り立っているのだと思います。このような取り組みを先導されてきた小嶋様は、企業文化が同行の一つのテーマとして打ち出されたことに対して、どのように捉えられていたのでしょうか。小嶋様:基本戦略の「ヒューマンファースト」に込められた「人を大切にしよう」という思いが反映されていると感じました。これまでの経営計画では、「成果」や「数字目標」に焦点が当たることが多かったのですが、今回の8次中計では、働く上での「人間らしさ」や「職場環境」といった領域にも着目されているな、と。特に「称賛」や「エンゲージメント」といった概念が重視されている点で、これまでの滋賀銀行とは大きく変わったと実感しています。私が若手だった頃は、失敗を恐れて保守的になるような風潮も少なからずありました。しかし、今は「どんどん前向きに挑戦したらいい」というメッセージが打ち出されており、これは行員にとって大きな安心感につながっていると思います。そのような想いを持ちながらご参加された支店長研究会を通じて、小嶋様は組織の土台としての健全な企業文化の重要性を改めて深く認識したと言います。小嶋様:研修を通じて、「健全なカルチャーがあって、組織能力がある」という、当たり前だが日頃忘れがちな大原則を改めて認識しました。「人を大事にする」とは単なる離職防止のためではなく、「健全なカルチャーを作る」という根本的な目的であることを言語化して教えてもらえた点も非常に良かったですね。また、「3割の人が動けば、あとのみんなはついてくる」という話は、全員を動かそうと重く考えがちだった私にとって、気が楽になる気付きでした。さらに、「できて当たり前」ではなく「できていることが素晴らしい」という価値観を持ち、称賛することの重要性を再認識するなど、日々の忙しさの中で見過ごしていた多くの気付きがある場でもありました。田中会長が講演で繰り返しおっしゃられていた、「課題は伸びしろ」という言葉は、今では部下との面談で積極的に使っています。この言葉を使うと、相手の捉え方がポジティブに変わるのを実感しています。研修の参加も踏まえながら、今後の組織に対する想いも語っていただきました。小嶋様:職員一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できる職場環境を提供することが、私のマネジメントの目標です。この支店での経験を通じて、職員が「次の仕事への展望」を開けるような、そんなきっかけを作りたいと考えています。滋賀銀行は、今まさに企業文化を変革していく転換点にあります。「挑戦」と「称賛」の文化を醸成し、私たち一人ひとりがその体現者、実践者となって、新しい滋賀銀行を作っていきたいと強く願っています。これから——挑戦と称賛を軸に、企業文化を「組織全体で」作る最後に、人事部の皆様に、滋賀銀行様の企業文化醸成に向けた今後の展望、そして行員の皆様へのメッセージを伺いました。植田様:今回の支店長研究会やヒューマンアワードは、あくまで第一歩です。今後は、Unipos社とも相談しながら、「人的資本経営プロジェクト」を本格的に推進していきます。より良い企業文化を作っていくために、課題の言語化や共有化、それをストーリー化して経営戦略に結びつけていく領域に、人事部として経営層も巻き込みながら挑戦していきたいと考えています。私は、全ての職員が仕事だけでなく、滋賀銀行の企業文化も誇らしい、誇れると感じてもらえるような組織にしたいと考えています。もちろん、そのためには様々な課題がありますが、私たちは「課題は伸びしろであり、前向きな失敗もまた伸びしろである」と捉えています。人事部としても、これからも様々なことに挑戦し続けていきたいですし、ぜひ職員の皆様にも、私たちと共に多様な挑戦を通じてより良い組織を作り上げていってほしいと願っています。私たちは今、大きなターニングポイントを迎えています。この機会を捉え、全員で前向きに進んでいけたらと思っています。水口様:「挑戦」と「称賛」の企業文化を醸成し、若手から上位職まで一人ひとりが挑戦し続けられる環境づくりを人事部として模索し続けていきたいと思います。また、多様性を尊重し、様々な人が活躍でき、互いを認め合える豊かな組織を目指していきたいですね。企業文化の醸成は大きなテーマですが、まずは互いの仕事や役割に興味を持ち、「良い行動を見つけ、称え、共有する」サイクルを回していくことから始まると思います。この「見つける、称える、共有する」という言葉は、「しがぎんヒューマンアワード」の設計における重要な要素でもありますので、「日々ヒューマンアワードに投票する意識でいる」ことからぜひ始めていただけると嬉しいです。辰野様:やることは山積していますが、シンプルに「もっと人に関心を持つ」ことを大切にしたいです。人的資本は「心がある」のが他の資本との一番大きな違いであり、どうすればその「心に火をつける」ことができるのかが重要です。人事部が中心となり、この取り組みの「共感者」をどんどん増やしていきたいと考えています。企業文化やカルチャーは、決して人事部や会社だけが作り上げるものではなく、日々の「半径5m、10mの中で生じる言葉や行動」が積み重なっていくことで形成されるものであり、一人ひとりが企業文化をつくる「当事者」だと考えています。人事部としては、この企業文化をより良くするための様々な仕掛けや「試み」をこれからも積極的に実行していきます。職員の皆様には、ぜひその「当事者の一人」として、共にこの取り組みに参画していただきたいと考えています。一人ひとりの“ちょっとした変化”が、やがて“とても大きな変化”につながると信じていますので、私たちと一緒に、より良い組織を築くために頑張っていきましょう。 今後もUnipos社はパートナーとして滋賀銀行様の企業変革をご支援してまいります。