東京材料株式会社は、2030年に向けて「一人ひとりがやりがいと充実感を持って新しい価値を共創している」という「ありたい姿」を掲げています。その実現に向け、人事総務部では「FLOWT(フロート)」と名付けた組織変革のキーワードを掲げ、個の力を活かし、組織として成果を上げる状態を創ることに取り組んできました。しかし、実行の過程では「実施してきた制度や施策は、本当に真の問題を捉えているのか」という不安が付きまとっていたと言います。そこで、問題把握の解像度を根本的に引き上げ、組織変革の突破口を見出すために、Uniposの「組織インサイトサーベイ」を実施いただきました。今回は、このプロジェクトを牽引したグローバル管理本部 副本部長 兼 人事総務部長 伊藤威人様に、本音で腹を割って話をする勇気と、構造的視点から得られた組織変革のヒントについてお話を伺いました。「2030年のありたい姿」へ。組織課題の解像度を上げる決意——今回の「組織インサイトサーベイ」を実施された背景を教えてください。解決したかった課題や当時の状況はいかがでしたか?伊藤様:東京材料には「2030年のありたい姿」として、「一人ひとりがやりがいと充実感を持って新しい価値を共創している」という姿があります。人事総務部としては、この実現のために「個の力を活かし、組織として成果を上げる状態」をつくることがミッションと考えています。正直な気持ちからお話しすると、私は、あまり会社中心で生きてきたタイプではありませんでした。でも最近は、社内で「この会社はダメだ」といった批判を聞くことに強い悔しさを覚えるようになりました。この感覚がいわゆるエンゲージメントなのかもしれないと受け止め、「自分事として会社を良くしたい」という想いをベースに、エンゲージメントの高い組織を本気で作りたいと考えたのが出発点です。2023年に初めて行ったエンゲージメントサーベイ結果から「意思決定の権限委譲」「仕事の進め方」「経営陣への信頼」「キャリア」「フィードバック」という5つの伸びしろを特定し、これらを改善するキーワードとして「FLOWT(Flat,Light,Open,Will,Tolerant)」を策定し実行してきました。しかし、取り組む中で「自分たちの見立てがズレていたら成果は出ない」という不安が拭えませんでした。施策の優先順位や会社全体の方向性との整合性に課題を感じていました。そこで、真の問題が何なのかという解像度を根本的に上げる必要性を感じ、「組織インサイトサーベイ」の導入を決めました。サービスの独自性、そして「人への信頼」がパートナー選定の決め手——数あるサービスの中で、なぜUniposをパートナーに選ばれたのでしょうか?伊藤様:3つの大きな理由があります。1つ目は機能面で、匿名自由記述による圧倒的な情報量と、短期間で分析からワークショップまで一気通貫で行える設計が当社のスピード感に合っていたことです。2つ目はサービスポリシーへの共感です。Unipos社の「何を考えているかより、どんな行動が起きているかが重要であり、その集積が文化を作る」というポリシーは、実効性を重視する私の考えと合致しました。そして3つ目が、担当の高橋さんへの信頼です。高橋さんは、初回の打ち合わせから真摯に組織開発の知見を共有してくださいました。また、ディスカッションを重ねる中で私の思考を即座に理解・言語化したうえで、当社にフィットする提案をしてくださる点も魅力でした。この「共に悩み、共に創る」という姿勢こそが、外部パートナーに求める最も重要な要素でした。「忖度なし」の本音で語り合い、人ではなく構造に光を当てる——プログラム実施にあたって、伊藤様が特にこだわられた点はどこですか?伊藤様:一番は「忖度をしない」ことです。現場が居酒屋では話しているのに、公式な場では目を背けているような本音をすべて表に出したいと考えました。そのため、匿名アンケートの結果をあえて加工せず、ほぼそのままの状態で全員に見てもらうことにこだわりました。もちろん「本音で語り合うこと」への不安はありましたが、避けていては何も始まりません。そこで、「共通価値観ワークショップ」の場では、経営から部門長、部署長、さらには海外拠点の社長まで、誰一人欠かすことなく主要な関係者全員を集め、この結果を共有することに決めました。当社にとって、仕事の手を止めてこれほどの規模で組織課題に真剣に向き合うというのは過去に例がない初めての試みでした。さらに、2025年9月にリニューアルした本社オフィスの「広場」という、部署間の壁を超えるために作った象徴的なスペースを会場に選んだことにも意味があります。この場所で、50名もの参加者を巻き込むビッグイベントとして実施したことは、参加したメンバーだけでなく、企画した人事総務スタッフにとっても大きな自信に繋がりました。——現場から厳しい声が出る「現実の課題に正対し直視する怖さ」はありませんでしたか?伊藤様:もちろん緊張はありましたが、社長が「やろうよ」と即断してくれたことが支えになりました。実施において注意を払ったのは、「人を責める犯人探し」にしないことです。個人の問題を責めるのではなく、どのような「構造」があるからこの現象が起きているのか。人ではなく、その背後にある構造に光を当てることで、全員が当事者として建設的な対話ができる土台を整えました。可視化された構造的な課題——匿名アンケートの結果から、具体的にどのような課題が明らかになったのでしょうか?伊藤様:例えば、以下のような構造的な課題が浮き彫りになりました。・部門間の壁と連携不足:効率を求めた縦割り組織が、結果的に内向き思考を生み、取引先への価値提供の低下に影響している。・保守的な風土:挑戦よりもリスク回避と現状維持が学習され、組織文化として定着してしまっている。ここで明らかになった生データと普遍的な組織に関する理論を結び付けながら、読み解きを進めていきました。今回の匿名アンケートを通じて、私たちが最も重視していたのは「どこまで本音を語ってくれるか」という点でした。蓋を開けてみるまでは「当たり障りのない回答に終始してしまうのではないか」という不安もありましたが、結果として、現場が日頃感じている切実な問題意識が忖度なしのデータとして明確に現れました。私自身が予感していた問題がそのまま具体的な声として可視化されたことで、「この取り組みには確実に意味があった」と大きな安堵と手応えを感じています。組織風土や空気感といった課題については、ある程度想定していた範囲内であり、自分たちの実感がデータによって正しく裏付けられたという感覚です。一方で、私にとって大きな発見だったのは「人事評価制度と実態のズレ」でした。具体的には、会社はメッセージとして新しい価値共創への「挑戦」を求めているものの、実際の評価制度の設計は「予算の達成」に重きが置かれたままになっています。そのため、現場は「挑戦したくても、制度がそれを許さない」という矛盾を感じていたのです。この結果を受け、私たちが解決すべき「真の課題」は組織風土といったソフト面だけではなく、人事として制度というハード面からも整備すべきことが山積しているのだと、今後の進むべき方向性を改めて強く認識することができました。「そこまで出すのか」という驚きが熱気に。対話を通じて「関係性の質」から変革する——「共通価値観ワークショップ」開催当日や事後の皆さんの反応はいかがでしたか?また、今回の手応えを踏まえた今後の展望についても教えてください。伊藤様:当日の会場は、決して白けることなく、むしろ心地よい熱気に包まれていたと感じました。匿名アンケートの生データをそのまま開示したことで、参加者からは「よくここまで出してくれた」「ここまでオープンにしていいのか」という驚きとともに、非常に肯定的な反応が得られました。ある種、組織として本音で向き合う「機が熟していた」のだと感じます。事後アンケートでも、参加者の80%以上が肯定的で、特に「他者の視点や考えを共有できた」という回答が多く寄せられました。まずは「今起きている問題を全員で共有し、目線を合わせる」という第一歩は、確実に達成できたという手応えがあります。▲「共通価値観ワークショップ」開催当日の様子伊藤様:ただ、本当の変革はここからです。ワークショップの中では、問題の本質まで踏み込むには時間が足りなかったという課題も見えてきました。組織の成功循環モデルのように、まずは「関係性の質」を高めることが不可欠であることをリアルに感じています。人は、自らが納得し、腹落ちしなければ主体的に動くことはありません。今後は、社長と少人数で深く対話する場を作るなど、お互いの意図や思いにまで踏み込んだコミュニケーションを継続的に実施していく予定です。そして、今回の気づきで明らかになった評価制度におけるズレの見直しといった「ハード面」と、対話による「ソフト面」の両輪で優先順位を明確にし、2030年のありたい姿の実現に向けて施策を打っていきます。組織変革には「しつこさ」と「狂気」が必要——最後に、これから組織変革に挑む方々へアドバイスをお願いします。伊藤様:アドバイスできるほどのことは正直できていませんが、組織変革に必要なのは「しつこさ」だと思います。時には、常軌を逸していると思われるほどの情熱、あえて言えば「狂気」に近い本気度が求められると思います。組織開発は漢方薬のようなもので、すぐに劇的な結果は出ません。だからこそ、諦めずに形を変えて何度も繰り返す。その熱量が広がったとき、組織は動き出すと信じています。「組織インサイトサーベイ」は、現状を正しく把握し、全員で事実を共有するための強力な武器になります。次の一歩に進むための土壌を作りたい企業には、非常におすすめできるサービスです。